2018/11/23

語含とバイオリン

妻の作文

語含がバイオリンと出会ったのは小学校三年生の夏でした。小一の時にお父さんの仕事の関係で平塚に引っ越してきて、学校も習い事のスイミングも新しい環境の中に溶け込むまで、二年程かかりました。少し落ち着いて今なら楽器を一つ初めてもいいかと思った時には、小学校三年生になり、遅いスタートになってしまいました。

しかし、いま振り返って見ると、その時が語含にとって最適な時期だと思っています。幼児期から、語含は自ら進んで学ぼうとするタイプではないです。スイミングも、三歳からはじめ、やめたい気持ちを何とか説得して上級クラスを卒業するまで七年もかけました。小三の頃スイミングがやっと順調に進み、もう一つの習い事を増やしたのがバイオリンです。最初は言葉で表現しきれない美しい音色に感動され、「習ってもいいかもしれない」と言ってくれた語含に、私の心の中ではむしろ前向きに捉え続けさせようという肯定的な思いが強かったです。

実際スタートして見たら、毎日家での稽古は苦しみの時間でした。その大変さは、思い出すと今も心が苦しいです。構える姿勢を保つのに、無言の涙、弓を持つようになり、思うように音が出せなくて悔しい涙、新曲に入ると、また指が思うように動かなくて焦りの涙、最初の一❘二年は毎日のようにいろいろな意味での涙がバイオリンに染み込むほどでした。

きらきら星を一年程弾く心の準備で、最初の頃は泣くと、気持ちを共有して慰めたり、十五分でも途中で休ませて、腰を鍛える簡単な筋トレーニングを少し入れたりしていました。それでも半年過ぎて、泣く事が癖になったと感じた時は、二人でルールを決めました。辛くても途中は休まない、できた時はカレンダにーシールを貼ったり、大げさに褒めたりするなど、とにかく稽古の時間を苦しみから解放させる工夫をしました。

徐々に、その成果が現れ、新しい曲に入るようになると、またほかの困難に遭遇しました。指の位置が分からなかったり、覚えられなかったり、練習が嫌になったりするのが出始めました。泣くのは大分回数が減りましたが、無言で涙流しながら、理由を聞くと返事もしないまま、目をつぶるかまいかのように視線は下向きに可憐な様子でバイオリンを弾くのは、見る側として見れば、お母さんにいじめられているとアピールするかのような感じでした。何回かは練習の途中で私が見てられなくて「やめよう!」と言い出した時がありました。でもその時に限って、意外と語含は一度もやめる話を出していないです。代わりに、泣きながら「ママ、はじめようよ。」と声を震えながら私と向き合いました。

そのような姿を見ると、私は語含が実にバイオリンが好きだと感じ、改めてルールを見直しました。家で稽古する時は、お母さんの指示に従う、二人で力合わせてもわからないのは、先生に質問する、うまく行かないところはスピードを落として丁寧に正確にリズムをとらえるなど、二人で話し合い、このやり方でうまく行ったら続ける方針にしました。

今は、練習の途中ではほとんど泣かなくなりました。まれに、泣く時といえば自分で懸命に練習したのに、うまく行かなかった時です。今まで、二回ほど先生の前で、泣いた事覚えています。たぶん自分で悔しかったかもしれないです。家に戻って、二人でこんな会話をしました。「語含、家で本当に練習頑張ったよね、でも、涙を我慢したくても、我慢できなかったよね。どうしたら、できるようになるかしら?」語含は、また無言でした。私は、暫く考えて「語含、私たちにとって先生の指導は本当に貴重な言葉、限られた時間に泣き止まないとその時間は戻れない、次のレッスンはまた一週間後になる、勿体ないよね、その時は、今の事に集中して、ここに来るまでどう頑張ったなど過ぎたことは考えないで欲しい。」「語含、約束して、大事なところは、今この瞬間に集中してね。」

そこから、確かに泣き虫の語含も良くなりつつ、バイオリンのおかげで本当に成長しました。今年夏休みには、私がいない間、発表会の曲アーモルを一人で練習し続けていました。二巻の「二人のてき弾兵」曲を習うとき、足りなかった勢いは、二月頃からキックボクシングを習い始め気持ちを込めて表現できるようになりました。今年の九月発表会では、今まで見たことの無い語含らしいひじの動きで、アーモルをメリハリつけて表現できました。これは、夏休み前から朝晩一日二回は必ずバイオリンを練習するという計画を実行してきた自身の努力があって、自分の音色を感じることが出来たと思います。本人も満足した様子でした。八月からはジムのスケジュールが変わり火曜日のバイオリンレッスンと重なるところが多いですが、両方よく頑張ってきました。自ら支度して行き、帰りは私とジムの前で打ち合わせして着替えてバイオリン教室に向かいます。体を鍛えて、汗を流すとともに気持ちもスッキリする体験を自分で感じ取ったようです。

今六年生の語含は二月の入試を向けて、金土日塾も通いながら準備しています。入試を考えたのも、やはり大好きになったバイオリンを大好きな先生の元で継続して指導を受けるためです。じっくり考えると、バイオリンが語含の心の中で占める割合がだんだん大きくなる感じです。今の生活の中心はバイオリン、そしてボクシングに塾の勉強です。

忙しい毎日ですが、「毎日小さな目標を持って達成させる、一週間が勝負」だとお話した奥村先生の言葉を肝に銘じています。将来、何になるかという理想ははっきりしていないが、今やるべきことをコツコツやりこなせる力は、バイオリンを通して培えると私は思います。

まだまだ、たくさんの創造もつかない困難があるかもしれないが、何年後は語含が自分の力で乗り越えることを望みながら、日々努力を重ねたいです。

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